税理士職業賠償責任保険という保険をご存知でしょうか?
税理士職業賠償責任保険は、税理士の過失等により依頼者に損害を与えた場合に、その依頼者から受けた損害賠償請求を補填するための損害保険のことです。
この保険の保険事故として、一番多い事例は消費税の各種届出の失念や誤りです。
つまり税理士のミス事例No.1は消費税の各種届出の失念や誤りということです。
今回は、この誤りやすい税務処理について見ていきます。
多くの人が陥ったミスを知って頂き、自社の税務処理の再確認や今後への注意喚起、今の顧問税理士はきちんと対応できているかの確認に活かして頂きたいと思います。
税理士職業賠償責任保険からみる【税務ミス事例No.1】
日税連保険サービスが公表している2016年度保険事故内訳によると、全体の事故件数493件のうち、消費税の届出(簡易課税制度選択・不適用届出書、課税事業者選択・不適用届出書)失念や誤りによる事故件数が182件(37%)にも上ります。
簡易課税や課税事業者の選択・不選択の届出は、提出期限を過ぎてしまうと一切の救済措置がなく、やりなおしがきかないことが、損害賠償となる要因の一因となっています。
また、一度選択届出書を提出すると、選択不適用の届出書を提出しない限り、その効力はずっと続くことになるため、選択届出書を提出していたことを失念していた場合や、税理士や経理担当者が変わる際に届出書を提出していることについて、うまく引継ぎが出来ていないとミスを生む原因となります。
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【最も誤りが多い税務処理①】消費税の簡易課税制度の届出をマスターする
税理士が損害賠償を受けた最も多いミス事例は、消費税の簡易課税制度又は課税事業者に関する届出についてでした。 今回はこのうち消費税の簡易課税制度について、制度内容と注意事項について再確認し ...
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【最も誤りが多い税務処理②】消費税の課税事業者選択の届出をマスターする
税理士が損害賠償を受けたミス事例の中で多いのは、消費税の課税事業者選択又は選択不適用に関する届出についてでした。 今回はこのうち消費税の課税事業者選択・選択不適用の届出について、制度内容 ...
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税理士職業賠償責任保険からみる【税務ミス事例No.2】
次に多かった事故事例は、所得税・法人税に関するもので、雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除(所得拡大促進税制)の適用失念(44件)になります。
想定されるケースとしては、そもそも所得拡大促進税制を知らなかったというケースです。
税制は毎年必ず税制改正が行われます。
廃止になる税制や新設される税制など、その時の景気や時代背景によりコロコロと変わります。
そのため、税制改正により新設された所得拡大促進税制自体を認識していなかったケースが考えられます。
その他、所得拡大促進税制は優遇税制(税金が安くなる制度)になりますので、そもそも今まで赤字が続いている等の理由で税金が出ていない場合には適用ができません。
今まで適用がなかった会社が、業績が急成長し税金が生じて適用が可能となった場面で、今までの認識のまま適用がないという思い込みで失念してしまった場合も想定されます。
会社の社長さんや経理担当者の方が常に税制改正による最新の税制を理解しておくことが望ましいのですが、難解な税制も多く、なかなか難しいかもしれません。
だからこそ是非税理士を頼って頂きたいと思います。
ただし、税理士のなかには、今回の事例のように優遇税制の適用失念してしまうような、毎年の税制改正を確認しないまま(多忙で確認できないまま)業務を行っている人もいますので注意しましょう。
まとめ
〇過去に消費税の課税事業者又は簡易課税制度の届出を行っていないか再確認する。
〇今後届出を行う場合には提出期限と効力発生時期に注意する。
〇税制改正事項は必ず確認を行う又は顧問税理士に確認する。
〇今の顧問税理士が最新の税制を理解しているか確認してみる。(今まで税制の改正について何もアナウンスがない場合は要注意です。)
【執筆後記】
昨日の明け方ごろ、台風13号が関東に最接近しました。
思っていたよりかは、雨風もそれほど強くなく通常通りの平日となり一安心でした。
これからまた暑さが復活ですかね。