国際税務という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的にどんなことか、分かる人はそんなに多くないと思います。
今回はそんな「国際税務ってなんだろう」という問いについて考えてみたいと思います。
国際税務との関わりの始まり
海外との取引が始まると国際税務との関わりも始まります。
たとえば、海外のソフトウェア開発会社に業務を依頼した際に支払う対価については、国際源泉課税の適用について調べて対応しなければなりません。
国際源泉課税の適用とは、言い換えると、海外のソフトウェア開発会社が日本の会社から受取る対価について、日本において課税が行われるのかどうかを考える必要があります。
もし日本において課税が行われる場合には、支払う側の日本の法人が源泉徴収義務を負い、日本の税務署に納付する必要が出てきます。
また、逆に、海外の業者からの依頼に基づき提供した業務報酬を受取る際に、海外の税制により、源泉税が控除された後の金額が送金されて、当初の見込みよりも少ない手取額となってしまうこともあります。
この場合には、海外において税金を納めたことになりますので、日本において外国税額控除の適用を考える必要があります。
国際税務という名の別の税法はありません
こうした国際間の取引に際して出てくる税務問題が国際税務です。
しかしながら、国際税務という名の別の税法規定が適用されるわけではありません。
あくまでも適用されるのは、日本の税法であり、相手先国の税法です。
また、相手先国との間に租税条約があると、その取り決めも勘案して対処することになります。
租税条約の内容は、国内の税法の規定よりも優先されるからです。
たとえば、外国会社に使用料の対価を支払う際には、日本の所得税法の「第四編 源泉徴収」の「第五章 非居住者又は法人の所得に係る源泉徴収」で適用関係を調べます。
そしてさらに、租税条約が適用される場合には、租税条約に関する届出書を提出した上で、源泉徴収税額を計算・納付することになります。
具体的な国際税務の分野
税法規定で国際税務に関係するものは、(1)利子・配当・使用料にかかる源泉税、(2)外国税額控除、(3)過少資本税制、(4)移転価格税制、(5)タックス・ヘイブン対策税制などです。
一般的に相手先国でも同様の税法規定がありますので、取引の方向によっては相手先国での上記税法規定も影響してきます。
国際税務との関わりは、自社の海外の会社との取引の開始から、規模の拡大、海外への支店や子会社の設立など、自社の事業の拡大や時の経過によって、多面的に派生することになります。
国際税務の規定は、同じ税法の中でも少し離れた章・節に置かれています。
そのため少し馴染みづらいですが、慣れれば仲良くできます。
恐れる必要はありません。
普段見ない場所に書かれているので馴染めないだけなのです。