税金(個人)

【個人事業主の所得計算①】総収入金額とは?所得との違いと計上の時期

 

個人事業主として稼いだ金額は、確定申告が必要になります。

確定申告書では、1年間に得た収入とかかった経費を計算し「所得」として申告することになります。正しく所得を把握するためには、所得の計算要素である「総収入金額」と「必要経費」を正確に押さえることが肝要です。

今回は「総収入金額」について、解説していきます。

 

 

総収入金額と事業所得・不動産所得との違い

個人事業主の確定申告の対象となる事業所得や不動産所得の金額は、次の計算式により計算されます。

 

総収入金額-必要経費=事業所得、不動産所得

 

この計算式から分かるとおり、「所得」とは事業等の利益部分を指す言葉であり、「所得」の計算要素として、「総収入金額」があることが分かると思います。

「総収入金額」と「必要経費」の金額を正しく押さえれば、おのずと正しい所得が導かれることになります。

この「総収入金額」について、詳しく見ていきます。

 

 

総収入金額とはなにか?

事業所得や不動産所得の計算に用いる総収入金額とは、簡単にいうと「売上」のことをいいます。

その他、次のようなものも収入金額となります。

 

・金銭による収入

・経済的利益を享受するときにおけるその価額

・商品を自家用に消費した場合や贈与した場合(その商品の販売があったものとして、商品の販売価額を収入金額とします。)

・商品について、災害や盗難などで損害を受けた際に受け取る保険金や、損害賠償金

・公共事業などの施工による休業などの補償として受け取る補償金

・空箱とか作業くずの売却代金などの雑収入

・仕入割引

 

 

総収入金額の計上(認識)の時期

対象となる年分の総収入金額とすべき金額は、年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、「収入すべき権利の確定した金額」は対象になります。(専門用語で「実現主義」といいます。)

実際に金銭等を受領しているかどうかや請求書を発送しているどうかは、関係がないことに注意が必要です。

 

Ex.
H30年の12月24日に商品を売って、その代金は年を越して翌年1月31日に受け取ったような場合

⇒ H30年分の総収入金額に含めます。

収入すべき時期をいつとするのかは、営んでいる事業の内容や取引の内容、契約の取決め等によって判定します。

 

 

総収入金額の計上(認識)の具体的な時期

収入すべき権利の確定した金額」はその年分の総収入金額に含めることは分かりましたが、世の中には様々な事業が存在していますので、一様にとらえることは難しいです。

ここでは、総収入金額の認識基準について、ケース別の判断基準を確認していきます。

 

不動産所得における総収入金額の計上時期

契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日、支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日)に総収入金額として計上します。

 

事業所得における総収入金額の計上基準

事業所得の総収入金額の収入すべき時期は、それぞれ次に掲げる日によることになります。

 

棚卸資産の販売(試用販売及び委託販売を除く。)

商品等の引渡しがあった日に総収入金額(売上)として計上します。

 

棚卸資産の試用販売

相手方が購入の意思を表示した日に総収入金額(売上)として計上します。

ただし、積送又は配置した棚卸資産について、相手方が一定期間内に返送又は拒絶の意思を表示しない限り特約又は慣習によりその販売が確定することとなっている場合には、その期間の満了の日となります。

 

棚卸資産の委託販売

受託者がその委託品を販売した日に総収入金額(売上)として計上します。

ただし、当該委託品についての売上計算書が毎日又は1月を超えない一定期間ごとに送付されている場合において、継続して当該売上計算書が到達した日の属する年分の収入金額としているときは、当該売上計算書の到達の日とすることもできます。

 

請負

物の引渡しを要する請負契約の場合には、その目的物の全部を完成して相手方に引き渡した日に総収入金額(売上)として計上します。

物の引渡しを要しない請負契約の場合には、その約した役務の提供を完了した日に総収入金額(売上)として計上します。

請負契約の内容が建設工事等の場合における引渡しの日がいつになるのかについては、例えば、作業を結了した日、相手方の受入場所へ搬入した日、相手方が検収を完了した日、相手方において使用収益ができることとなった日等当該建設工事等の種類及び性質、契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、その者が継続して収入金額に計上することとしている日によることになります。

 

人的役務の提供(請負を除く。)

その人的役務の提供を完了した日に総収入金額(売上)として計上します。

ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については、その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日となります。

 

資産(金銭を除く。)の貸付けによる賃貸料でその年に対応するもの

その年の末日(貸付期間の終了する年にあっては、当該期間の終了する日)に総収入金額(売上)として計上します。

 

総収入金額の計上時期が間違っていた場合はどうなるの?

総収入金額は「収入すべき権利が確定したとき」に計上することになりますが、計上する時期が間違えてしまった場合にはどうなるのでしょうか?

税務調査時に計上時期の誤りが見つかった場合には、確定申告書のやり直しをすることになります。

さらに、やり直しと合わせて延滞税といったペナルティーの税金も追加で支払わないといけません。

税務調査では、年末あたりの売上について特に念入りに調査が行われ、その年の売上として計上すべきものが翌年になっていないか等のチェックが厳しく入ります。

のちのち慌てないためにも税理士等の専門家のアドバイスを仰ぎながら、「総収入金額」を正しく処理することが大切です。

 

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  • この記事を書いた人

jun.hamano

濱野純税理士事務所 代表。 【事務所HP】https://hamanotax.com 1980年10月 埼玉生まれ。埼玉県草加市育ち、東京・蒲田在住。税理士。中小企業診断士。節税、節約、税務処理を身をもって実践しブログに公開しています。

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