3月決算法人の数は多いことで知られていますが、税制改正事項について改正後初めて適用されることが多いのが、実は3月決算法人になります。
そのため、税制改正事項が頭に入っていること、そして適切に理解していないと決算や確定申告において誤りが生じてしまいます。
今回は主に平成31年3月期決算の法人を対象に、決算・確定申告にあたっての留意事項をみていきます。
法人税関連【欠損金、賃上げ投資促進税制、租税特別措置の適用除外】
法人税の税率
法人税の税率は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度については23.2%とされており、3月決算法人においては前期と変更はありません。
また、中小法人の軽減税率についても同様に15%で変更はありません。
中小法人とは?
普通法人のうち、事業年度終了の時において資本金もしくは出資金の額が1億円以下のものをいいます。
ただし、資本金又は出資金の額が5億円以上の法人等による完全支配関係(100%による資本関係)がある法人および100%グループ内の複数の大法人に株式等の全部を直接または間接に保有されている法人を除きます。
軽減税率とは?
租税特別措置法により規定されている法人税率の特例の税率で、中小法人については年800万円以下の部分の所得について、税率が軽減されています。
繰越欠損金に係る改正
大法人の控除限度額
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度について、大法人については控除限度額が設けられていますが、以下のとおり段階的に引き下げられてきています。
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度 | 65% |
平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度 | 60% |
平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する事業年度 | 55% |
平成30年4月1日以後に開始する事業年度 | 50% |
平成31年3月期の申告については、50%の控除限度となります。
中小法人については、控除限度額はありません。
繰越期間の延長
平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金については、繰越期間が10年間に延長されています。
したがって、平成30年3月期において生じた欠損金については、10年間繰り越すことができます。
賃上げ投資促進税制が始動
従前から存在していた所得拡大促進税制は、平成30年3月31日をもって終了し、賃上げ等の促進に係る税制(賃上げ投資促進税制)に改組されました。
賃上げ投資促進税制は、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されます。
制度の詳細は以下で紹介しておりますのでご参照ください。
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【大企業版】賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制の改正)の税制優遇の利用
所得拡大促進税制が改正され、平成30年4月1日以降に開始する事業年度から賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制)に変わりました。改正後においても、青色申告法人が、一定の要件 ...
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賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制の改正)の税制優遇の利用【中小企業・個人事業主版】
賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制)は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法 ...
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租税特別措置の適用除外措置
大法人(租税特別措置法上の中小企業者以外の法人)が平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において、次に掲げる要件のいずれにも該当しない場合には、下記の3つの租税特別措置の適用を受けることができないこととされました。
租税特別措置法上の中小企業者とは?
資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人をいいます。
ただし、資本金の額または出資金の額が1億円超の法人に発行済株式等の2分の1以上を所有されている法人、および2以上の大規模法人に発行済株式等の3分の2以上を所有されている法人を除きます。
適用除外に係る要件
次のいずれも満たさないこと
①継続雇用者給与等支給額 > 継続雇用者比較給与等支給額
②国内設備投資額 > 当期償却費総額×10%
③当期の欠損金控除前の所得金額 ≦ 前期の欠損金控除前の所得金額
要件の判定に出てくるものは、賃上げ投資促進税制で用いられているものと同じです。
適用除外とされる租税特別措置
- 試験研究費の税額控除
- 地域未来投資促進税制に係る税額控除
- 革新的情報産業活用設備を取得した場合の税額控除(IoT税制)
試験研究を行っている大法人については、上記の要件を満たすことが出来ない場合は、試験研究費の税額控除の適用を受けることができません。忘れずに要件の確認を行いましょう。
地方税関連【主に外形標準課税】
法人事業税(外形標準課税)の負担変動の軽減措置
平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度において、法人事業税の負担変動の軽減措置として一定の算式により計算された金額を付加価値割又は資本割から控除することができます。
法人事業税の負担変動の軽減措置
平成27年度税制改正により導入された外形標準課税の拡大(所得割の税率引き下げ及び付加価値割・資本割の税率引き上げ)によって生じる税負担の変動の影響を緩和する措置のことで、付加価値額が一定以下の法人を対象に税負担の増加について、税額控除により軽減が図られています
控除額の上限は毎年逓減していきます。今回の申告でも上限の確認を行いましょう。
事業年度 | 平成27年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度 | 平成28年4月1日から平成29年3月31日までに開始する事業年度 | 平成29年4月1日から平成30年3月31日までに開始する事業年度 | 平成30年4月1日から平成31年3月31日までに開始する事業年度 |
控除額の上限 | 負担の増加額の2分の1 | 負担の増加額の4分の3 | 負担の増加額の4分の2 | 負担の増加額の4分の1 |
法人事業税(外形標準課税)における賃上げ投資促進税制
法人税における所得拡大促進税は賃上げ投資促進税制へと改正が行われましたが、外形標準課税における所得拡大促進税制についても同様に賃上げ投資促進税制へと改正が行われました。
基本的には法人税のものと内容は同じですが、上乗せ措置がない点に留意が必要です。
また、連結納税の適用を受けている法人については、法人税では連結ベースで判定を行うのに対し、外形標準課税においては連結ベースの判定と個社ベースの判定のいずれかを選択できる点に留意が必要です。