役員賞与を損金とするためには、事前確定届出給与に関する届出書をあらかじめ税務署に提出した上で、届出書に記載したとおりに役員賞与を支給する必要があります。
従業員の賞与の支給時期と合わせて、役員についても職務執行開始から間もない時期に賞与を支給する場合があります。このような場合に、同じタイミングで賞与を支給したとすると、役員にとっては職務執行を開始してすぐの役員賞与になるので、税務上問題があるのはないかと考える向きもあるようです。
質問【職務執行開始直後の事前確定届出給与について】
当社(3月決算)では、令和3年5月25日の定時株主総会において、取締役に対して、定期同額給与のほかに、使用人に対する賞与の支給時期に合わせて「令和3年5月25日から令和4年5月24日までの役員給与として令和3年6月30日及び同年12月20日にそれぞれ300万円を支給する」旨の定めを決議し、届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。
この定めに従って支給した令和3年6月30日及び同年12月20日の役員給与は、事前確定届出給与として、当期(令和4年3月期)において損金の額に算入できるのでしょうか。それとも、これらの給与はいずれも職務執行開始して間もなく支給するものなので何らかの損金不算入額が生じるのでしょうか。
ご質問への回答
支給時期が一般的に合理的であると考えられるような場合であれば、職務執行開始直後の支給であっても損金の額に算入することができると考えられます。
解説
役員の職務執行期間は一般的には定時株主総会から次の定時株主総会までの1年間であると解されることからすれば、貴社が6月に支給した給与も12月に支給した給与も翌年5月までの1年間の職務執行の対価の一部となるものです。
ところで、民法上委任の報酬の対価は後払いが原則とされていることを考えると、このような支給形態を採る場合には報酬の一部前払いになるともいえることから、税務上問題があるのではないかと考える向きもあるようです。
しかしながら、使用人への賞与が盆暮れの時期に支給されているのが一般の企業慣行であること、委任の対価である1年間の報酬の支払時期、その支給額を決めるのは株主総会等であること、事前確定届出給与の支給時期は、使用人兼務役員の使用人分の賞与を除きその役員の職務執行期間内であれば特に法律上制限されていないこと等を考えると、役員に対して使用人と同時期に賞与を支給することはあながち不自然なことではないといえます。
そこで、貴社が、役員への賞与の支給時期を使用人への盆暮れの賞与と同じ時期とし、かつ、毎期継続して同時期に賞与の支給を行っているなど、支給時期が一般的に合理的に定められているような場合であれば、事前確定届出給与としてその事業年度の損金の額に算入して差し支えないと考えられます。