販売奨励金とは、自社製品等の販売促進の目的で特定の地域の得意先である事業者に対して金銭又は事業用資産を交付する費用をいいます。
販売奨励金は、販売促進を目的とするもので、贈答とはその趣きを異にしていること、得意先である事業者に対するものであって、相手先事業者の収益に計上され、個人的な欲望を充足させるためのものではないこと等から、交際費等とはなりません。
今回は、販売奨励金・販売促進費のうち、特約店の従業員を対象とする販売奨励金品の交付事例について見ていきます。
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特約店等の従業員に交付する販売奨励金品【事例】
【事例】
当社の特約店等の従業員を対象に販売奨励制度の実施を予定しています。
特約店の従業員に対し年間の販売計画を作成し、販売計画の達成者には数万円程度の現金又は旅行クーポン券等を支給する予定です。
これらの費用は販売促進費となりますでしょうか。
ご質問に対する【回答】
一般的に、得意先や仕入先等の従業員等に対して取引の謝礼等として支出する金品の費用は交際費に該当します。(租税特別措置法通達61の4(1)-15(9))
一方、特約店のセールスマンに対する報奨金で所得税法の源泉徴収を受けるものは、交際費等には該当しません。
参考 租税特別措置法通達
(特約店等のセールスマンのために支出する費用)
61の4(1)-13 製造業者又は卸売業者が自己又はその特約店等に専属するセールスマン(その報酬につき所得税法第204条の規定の適用を受ける者に限る。)のために支出する次の費用は、交際費等に該当しない。
(1) セールスマンに対し、その取扱数量又は取扱金額に応じてあらかじめ定められているところにより交付する金品の費用(注) (1)に定める金品の交付に当たっては、所得税法204条第1項の規定により所得税の源泉徴収をしなければならないことに留意する。
これは、自社製品を取り扱う特約店のセールスマンに対して、販売活動を積極的に行ってもらうための費用は、単純な謝礼というよりかは、販売促進のための費用という性格が強いからです。
このようなセールスマンの報奨金品の例に準じて、専ら当社製品を取り扱う特約店等の一般従業者に対しても、その人の外交販売に係る当社製品等の取扱数量や取扱金額に応じて、あらかじめ定められている基準に基づいて金品を交付する費用も交際費等に該当しないこととされています。
参考 租税特別措置法通達
(特約店等の従業員等を対象として支出する報奨金品)
61の4(1)-14 製造業者又は卸売業者が専ら自己の製品等を取り扱う特約店等の従業員等に対し、その者の外交販売に係る当該製品等の取扱数量又は取扱金額に応じてあらかじめ明らかにされているところにより交付する金品の費用については、61の4(1)-13の(1)に掲げる費用の取扱いの例による。
このような取扱いとされているのは、以下の理由のためです。
〇契約形式の違い(セールスマンや従業者の違い)だけで交付する報奨金品の性格を一方的に交際費等として決めつけることは必ずしも実情に即さないこと。
〇あらかじめ交付基準があきらかにされており、これに従って特約店等の従業者が外交販売を行い、その実績に基づいて交付されるような報奨金品の費用が、常識論からみて交際費等にはあたらないと考えられること。
以上のことから、特約店等の従業者に対し販売目標を達成した場合に交付する旅行クーポン券や現金は販売促進費として認められることになります。
ただし、セールスマンと同様に源泉徴収の対象となる点に留意が必要です。