税金(個人)

【所得税】株式の譲渡と配当に関する確定申告における整理

 

個人の確定申告の中でも複雑で混乱を招くのが、株式の譲渡や配当に関する事項です。

そこで今回は、個人の方が上場株式等を譲渡した場合や配当を受取った場合の確定申告について、整理していきます。

 

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上場株式等の売却の場合

【特定口座(源泉徴収あり)の場合】

上場株式等を売却し(全ての口座で)譲渡益となった場合

すでに源泉徴収されていますので、確定申告は不要です。

ただし、前年以前から繰越されてきた損失の金額と相殺する場合は、確定申告が必要になります。

 

上場株式等を売却し、譲渡損となる口座が(一つでも)ある場合

・原則的には確定申告は不要です。

・確定申告することで、他の口座で発生した譲渡益と損益通算することができます。

更に損益通算を行った後、まだ譲渡損が残る場合には配当の額と損益通算することができます。

・確定申告することで、譲渡損失額を翌年以降に繰越すことができ、翌年以降生じた譲渡益等と損益通算することができます。

 

 

【特定口座(源泉徴収なし)又は普通口座の場合】

上場株式等を売却し譲渡益が出ている(20万円超の場合)

源泉徴収されていないため必ず確定申告が必要になります。

 

 

上場株式等を売却し譲渡益が出ている(20万円以下の場合)

・サラリーマンの方で年末調整済みであり他に所得がない場合には、確定申告は不要です。(ただし、住民税の申告は必要になります。)

この場合であっても、例えば医療費控除やふるさと納税による寄附金控除の適用を受けるために確定申告をする場合には、譲渡益が20万円以下であっても含めて確定申告する必要があります。

 

上場株式等を売却し、譲渡損となる口座がある場合

・原則的には譲渡損が生じた口座については、確定申告は不要です。

・確定申告することで、他の口座で発生した譲渡益と損益通算することができます。

更に損益通算を行った後、まだ譲渡損が残る場合には配当の額と損益通算することができます。

・確定申告することで、譲渡損失額を翌年以降に繰越すことができ、翌年以降生じた譲渡益等と損益通算することができます。

 

 

まとめ図

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上場株式等の配当等を受けた場合

 原則的には申告不要

上場株式等の配当等は、支払の際に源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)されているため、申告不要です。

 

 

上場株式等の譲渡損失との損益通算

申告分離課税にて確定申告をすることで、上場株式等の譲渡損失と配当等の額を損益通算することができます。

ただし、特定口座内で譲渡損失額と配当等の額が生じている場合には、自動的に損益通算が行われるため、わざわざ申告する必要はありません。

損益通算されていない配当等の額があり、上場株式等の譲渡損失額が残っている場合で、損益通算を行う場合に確定申告が必要になります。

 

 

総合課税で配当控除を受ける

配当を受けた場合に、特に何もしないと源泉徴収(所得税15.315%、住民税5%)がされて課税関係が終了します。(源泉分離課税)

ここであえて給与等の他の所得と合算して確定申告(総合課税)すると配当控除を受けることができます。

総合課税の税率は、累進課税となるため所得が大きくなればなるほど税率も高くなります。(所得税5%~45%、住民税10%)

そのため、課税所得が695万円超の人の場合には、総合課税にて確定申告することで配当控除を受けられますが、結果として税率が高くなり不利となってしまいます。

課税所得が695万円以下であれば、総合課税で配当控除を受けた場合の方が有利となる場合があります。

 

さらに突っ込んだ手法として、所得税の確定申告では総合課税、住民税は申告不要制度(源泉分離課税)を選択するという手法があります。

課税所得金額が900万円以下の場合においては、所得税では総合課税を適用し配当控除のメリットを享受し、住民税では申告不要制度を適用し、5%の税率とすることができるため、源泉分離課税に比べ有利となります。

(保有する株式等の内容により減税率は異なりますが、住民税においては総合課税を選択するよりも申告不要制度を選択した方が、常に(最少で2.2%、最大では5%)実質的な税率が低くなります。)

この手続きをする際には、所得税の確定申告書を総合課税にて申告し、別途、市区町村に対し「上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書」を住民税納税通知書が届く日までに提出する必要があるため、ご注意下さい。

 

まとめ図

 

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【国税庁資料より】

 

確定申告することによる配偶者控除、扶養控除、国民健康保険料等への影響

上記のメリットを享受するために確定申告をすることで所得(譲渡利益、配当額)が増加する場合等には、配偶者控除、扶養控除、住民税、国民健康保険料等に影響が出る場合がありますので留意が必要です。

源泉徴収されて課税関係が終了しているものを、メリットを享受するためにあえて確定申告した場合には、申告した譲渡利益額、配当等の額はその人の所得として加算されます。

配偶者控除を含めた上記の各種控除や社会保険関係については、その人の所得により適用関係が変わるため、他の所得と株式の譲渡所得・配当額の合計が、所得(収入)制限に引っかからないかを留意しながら確定申告するかどうかを決める必要があります。

 

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特に注意が必要なのが、繰越されてきた前年分以前の譲渡損失と当年分の譲渡益や配当等を損益通算する場合には、損益通算する前の金額が所得となりますので注意が必要です。

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  • この記事を書いた人

jun.hamano

濱野純税理士事務所 代表。 【事務所HP】https://hamanotax.com 1980年10月 埼玉生まれ。埼玉県草加市育ち、東京・蒲田在住。税理士。中小企業診断士。節税、節約、税務処理を身をもって実践しブログに公開しています。

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