最近よく耳にするようになった仮想通貨。昨年は価額が乱高下してニュースにもなりましたよね。
この仮想通貨ですが、売却等をして得られた利益については税金が課せられることになりますので、原則として確定申告が必要になります。
今回はこの仮想通貨に関する確定申告について、国税庁の資料を基に見ていきたいと思います。
仮想通貨を売却する場合
保有する仮想通貨を売却した場合の所得の計算方法は、以下の算式により計算されます。
〇参考事例
3月9日 2,000,000円で4ビットコインを購入した。
5月20日 0.2ビットコインを110,000円で売却した。
〇計算式
110,000円-(2,000,000円/4ビットコイン)×0.2ビットコイン=10,000円
【売却価額】【1コインあたりの取得価額】 【支払コイン】 【所得金額】
仮想通貨を売却した場合には、その売却価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
上記の事例では10,000円が所得金額となります。
仮想通貨で商品を購入した場合
保有する仮想通貨で商品を購入した場合の所得の計算方法は、以下の算式により計算されます。
〇参考事例
3月9日 2,000,000円で4ビットコインを購入した。
9月28日 155,000円の商品購入に0.3ビットコインを支払った。
〇計算式
155,000円-(2,000,000円/4ビットコイン)×0.3ビットコイン=5,000円
【商品価額】【1コインあたりの取得価額】 【支払コイン】 【所得金額】
商品購入の際に仮想通貨で決裁した場合には、商品の価額と仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
上記の事例では5,000円が所得金額となります。
仮想通貨同士の交換の場合
仮想通貨の交換の場合の所得の計算方法は以下の算式により計算されます。
〇参考事例
3月9日 2,000,000円で4ビットコインを購入した。
11月2日 他の仮想通貨(時価600,000円)を購入するため、1ビットコインを決裁のために使用した。
〇計算式
600,000円-(2,000,000円/4ビットコイン)×1ビットコイン=100,000円
【他の仮想通貨時価】【1コインあたりの取得価額】【支払コイン】 【所得金額】
他の仮想通貨購入のために保有する仮想通貨を決裁のために使用した場合には、他の仮想通貨の購入価額と保有する仮想通貨の取得価額との差額が所得金額となります。
上記の例では、100,000円が所得金額となります。
複数回に渡って仮想通貨を買い増しした時の取得価額
上記の計算式では、1ビットコインあたりの取得価額を計算して所得金額を算出しています。
1回だけの購入の場合には計算はそんなに難しくはないのですが、仮想通貨を複数回買い増しした場合の取得価額はどうなるのでしょうか?
同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の取得価額は、移動平均法により算出することになります。ただし、継続適用を条件に総平均法を用いることも認められています。
上記で使用した例を用いて計算してみましょう。
■3月9日 2,000,000円で4ビットコインを購入した。
■5月20日 0.2ビットコインを110,000円で売却した。
■9月28日 155,000円の商品購入に0.3ビットコインを支払った。
■11月2日 他の仮想通貨(時価600,000円)を購入するために1ビットコインを決裁のために使用した。
■11月30日 1,600,000円で2ビットコインを購入した。
〇移動平均法を用いて取得価額を算出する場合
3月9日 取得した分の1ビットコイン当たりの取得価額
2,000,000円/4コイン=500,000円
11月30日の追加購入直前のビットコインの簿価
500,000円×(4コイン-1.5コイン)=1,250,000円
11月30日に追加購入した後の1ビットコインあたりの取得価額
(1,250,000円+1,600,000円)/(2.5コイン+2コイン)=633,334円(1円未満切上)
〇総平均法を用いて取得価額を算出する場合
(2,000,000+1,600,000円)/(4コイン+2コイン)=600,000円
【1年間に購入したビットコインの総額】【購入総数】
仮想通貨が分裂等して新たに誕生した仮想通貨を取得した場合
仮想通貨の分裂に伴い取得した新たな仮想通貨については、分裂後の新たな仮想通貨においては取引相場がないため、分裂時点においては価値がなかったものと考えられます。
したがって、取得時点では所得は生じず、新たな仮想通貨を売却や使用した時点において所得が生じることになります。
この場合の取得価額は0円となり、売却価額等がそのまま所得金額となりますのでご注意ください。
仮想通貨に関する所得の所得区分
ここまで仮想通貨に関する所得金額をみてきましたが、確定申告ではどの所得区分で申告すればよいのでしょうか?
仮想通貨を使用することによる損益は、原則として、雑所得に区分され総合課税が適用されます。ただし以下の場合等には異なる区分となりますのでご注意下さい。
・事業所得者が、事業用資産として仮想通貨を保有し、決裁手段として使用している場合、その使用により生じた損益については、事業所得となります。
・仮想通貨取引により生計を立てて生活していることが客観的に明らかである場合には事業所得になります。
確定申告の記載箇所
仮想通貨による利益は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、雑所得に区分されます。
その場合の確定申告書の記載箇所は、確定申告書Aの場合には「所得金額」の欄の「②(雑)」に、確定申告書Bの場合には「所得金額」の欄の「⑦(雑)」に、上記で見てきた売却等によって得た所得金額を記載して提出することになります。
損失の取扱い
仮想通貨による所得は原則として雑所得になりますが、損失が生じた場合に給与所得等の他の所得と通算することはできるのでしょうか?
所得税法上、他の所得と通算できる所得は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得とされています。
仮想通貨は雑所得に区分されますので、損失が生じた場合であっても他の所得と通算することはできません。
ただし、雑所得となる仮想通貨同士の損益通算は可能となります。
仮想通貨の証拠金取引
一部の取引所においては、仮想通貨で証拠金取引をすることができますが、いわゆるFX取引の取扱いとは異なり、総合課税により申告することになります。
税法上で規定される申告分離課税の対象は、金融商品取引法等に基づき行われる①商品先物取引等、②金融商品先物取引等、③カバードワラントの取得等とされており、仮想通貨の証拠金取引はこれらのいずれの取引にも該当しないためです。
マイニングにより仮想通貨を取得した場合
マイニング(採掘)等により仮想通貨を取得した場合には、その所得は事業所得又は雑所得の対象となります。
所得金額は収入金額(マイニング等により取得した仮想通貨の取得時点での時価)から、必要経費(マイニング等に要した費用(取引認証をするための計算を行うコンピュータの購入費用等))を差し引いて計算することになります。
また、マイニング等により取得した仮想通貨を売却又は使用した場合の所得計算における取得価額は、仮想通貨をマイニング等により取得した時点での時価となります。
確定申告をしなくもよい場合
仮想通貨を取得した後、売却、商品の購入、交換等をしておらず、保有しているだけの場合は、たとえ取得した時点と比べて含み益が出ていたとしても申告の必要はありません。(利益が実現していないためです。)
また、給与所得者(年末調整済みのサラリーマン)の方で、仮想通貨による雑所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。
ただし、この場合であっても、医療費控除等の適用やふるさと納税等で確定申告が必要となる場合には、たとえ仮想通貨による雑所得が20万円を下回っていても、仮想通貨による雑所得を含めた全ての所得を確定申告する必要があるためご注意ください。