国際税務

双方居住者に対する二重課税と租税条約の取扱い

税法における日本の居住者の考え方と外国の居住者の考え方が異なること等の理由により、双方の国で「居住者」になる場合があります。この場合には、二重課税の問題が発生してしまいますが、租税条約における双方居住者の振り分けルールにより解決できる場合があります。

「居住者」「非居住者」の考え方

日本の所得税法上は、居住形態に応じた課税が前提となっています。

国内に住所を有する個人や1年以上居所を有する個人を「居住者」としており、それ以外の個人を「非居住者」としています。居住者の場合は、全世界所得に対して課税が行われるのに対し、非居住者の場合には一定の国内源泉所得のみに課税が行われることになります。

上記は日本における取扱いですが、「居住者」としてその国で課税されるかどうかは、それぞれの国の税法に則り判断されることになります。

「居住者」の定義は国ごとに異なることから、日本の所得税法のもとで「居住者」とされる個人が、外国でも「居住者」に該当してしまうこともあり、いわゆる「双方居住者」になってしまうこともありえます。

 

「双方居住者」の二重課税の問題

双方居住者になってしまうと、それぞれの国で全世界所得に対して課税されることになりますから、同一の所得に対して二重で課税されてしまうという問題が生じてしまいます。(いわゆる二重課税の問題。)

※居住者=全世界所得課税という取扱いにならない国もあります。

 

国際的二重課税の租税条約による解決

租税条約には双方居住者の居住地国の振り分けルールが規定されているのが通例です。

例えば「日越租税条約」では以下の通り規定されています。

(日越租税協定第4条2)

2 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、次のとおりその地位を決定する。

(a)当該個人は、その使用する恒久的住居が存在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある国)の居住者とみなす。

(b)その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的施設をいずれの締約国内にも有しない場合
には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。

(c)その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、自己が国民である締約国の居住者とみなす。

(d)当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事案を解決する。

「恒久的住居」、「重要な利害関係の中心がある」、「常用の住居」という文言は抽象的であるため、租税条約により居住地を判定する場合には慎重に判断する必要がありますが、多くの双方居住者の問題は租税条約の双方居住者の振り分けルールにより解決されることになると考えられます。

 

  • この記事を書いた人

jun.hamano

濱野純税理士事務所 代表。 【事務所HP】https://hamanotax.com 1980年10月 埼玉生まれ。埼玉県草加市育ち、東京・蒲田在住。税理士。中小企業診断士。節税、節約、税務処理を身をもって実践しブログに公開しています。

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