中小企業の社長さんに押さえておいて欲しい会社の税金のはなしの5回目は、販売費・一般管理費の計上基準です。
当期の費用(損金)として計上してよいものには、税務上、一定の基準があります。
もし自由に費用を計上できるならば、利益の圧縮は容易になり、課税の公平性を損ねることになるため、税務上は一定の基準を設けて費用の計上時期を定めています。
この基準のことを「債務確定基準」といいます。
債務確定基準によれば、例えば来期費用が発生しそうだからといって、費用を見越し計上して、利益を圧縮する(税額を減らす)ことは、税務上出来ない事になります。(会計の世界では計上することができます。)
今回はこの債務確定基準について見ていきたいと思います。
事業年度終了の日までに債務が確定していない減価償却費以外の販売費、一般管理費その他の費用については、当事業年度の損金(費用)の額に算入することができません。
この債務の確定とは、原則として次の要件の全てに該当する場合をいいます。
債務確定基準
①当事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
②当事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。(財貨の費消・役務の提供があったということ。)
③当事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
噛み砕いて解説すると、以下のようになります。
①の債務が成立しているということは、「契約が成立」していることを意味します。契約の成立には、契約書などの書面を交わしている必要はなく、口頭の注文・承諾などでも成立します。
②の具体的な給付を受けていることとは、契約で注文した物品の納品やサービスの提供を受けることをいいます。
③購入したものや提供を受けたサービスの代金の金額が、決算日までに分かっていることをいいます。
これらの要件のことを税務の世界では「債務確定基準」と呼んでいます。(法人税法基本通達2-2-12)
この基準を満たすまでは、当期の費用として計上することはできません。
修繕費を例にとると、建物の修繕を発注し(①の要件を満たします。)、業者によって修繕が完了し(②の要件を満たします。)、かつ金額の見積が客観的にでき得る状況(③の要件を満たします。)にあれば、上記の三つの要件を満たし未払金等として費用を計上できることとなります。
また、会計の世界では引当金(ex.賞与引当金、修繕引当金等)として見積もり計上するものがありますが、税務では上記の債務確定基準に照らし合わせて考えると債務が確定しているとはいえないため、費用として損金の額に算入することができません。