事業所得や不動産所得を計算する上では、「総収入金額」は実現主義により、「必要経費」は発生主義により計上していくことになります。
もっと簡単な帳簿付けの方法として「現金主義」の特例という制度があります。簡単である反面、適用を受けるための要件やデメリットもあります。
現金主義の内容を確認して、より自分にあった計上方法で帳簿付けを行いましょう。
原則的な総収入金額や必要経費の算入時期
事業所得や不動産所得の計算の基になる総収入金額や必要経費は、原則として実現主義・発生主義により認識することになります。
実現主義や発生主義とは、以下の基準に則り、その基準が確定したときに、総収入金額・必要経費に算入することになります。
・総収入金額(実現主義により認識)
「収入すべき権利が確定したとき」
現実に金銭等を受領しているかどうかは関係ありません。
詳しくはこちらをご確認ください。
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・必要経費(発生主義により認識)
「売上原価や収入金額を得るために要した費用の額、その他業務上生じた費用の額で債務が確定したとき」
現実に支払った金額だけとは限りません。
詳しくはこちらをご確認ください。
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小規模事業者の現金主義の特例
現金主義とは?
原則として、総収入金額は実現主義により、必要経費は発生主義により認識・計上することになります。
そうではなく、簡便的に実際にお金が入ってきたときに「総収入金額」とし、お金が出ていったときに「必要経費」とすることが認められる特例があります。
このように金銭の授受をしたときに、収入金額や必要経費に算入するという基準を「現金主義」と呼んでいます。
現金主義をとるための要件は?
現金主義とするためには、以下の要件の全てを満たす必要があります。
要件
①青色申告者である
②その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額(青色事業専従者給与及び事業専従者控除の額を必要経費に算入しないで計算した金額)の合計額が300万円以下
③事前に税務署に届出を提出していること
①について、白色申告では、現金主義による記帳が認められていません。現金主義で帳簿付けをするには、青色申告であることが条件となっています。
③届出の提出について
「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署へ提出する必要があります。
適用を受けようとする年の3月15日までに提出してください。 (その年の1月16日以後に新たに開業した場合には、開業した日から2ヶ月以内)
現金主義を採用する上での注意点(青色申告特別控除との関係)
この特例を使用した場合には、青色申告65万円控除の要件である正規の簿記の原則で経理したことにならないため、65万円の特別控除は使えません。
10万円控除の適用になる点にご注意下さい。
現金主義のデメリット
簡単に経理することができる現金主義ですが、以下のようなデメリットがあります。
■事業の業績を正しく把握することができない
現金主義の場合、実際に金銭の授受をしたときに、収入金額・必要経費に算入することになります。そのため、請求書を発送した時や仕事が完了した時期、サービスの提供を受けた時期とは異なります。
実際の金銭の授受は、支払が早い業者や反対に遅い業者など、取引業者ごとに時期が異なるため、事業の業績を適切に把握することはできません。
■債権・債務の管理ができない
収入金額や必要経費を発生した時期ごとに処理した場合、その収入金額の入金がきちんとなされているか、支払のもれはないか等、帳簿を見ることにより管理することができます。
現金主義の場合には、帳簿からでは入金されるまでは売上を把握することができず、請求書を送ったにもかかわらず入金が未済であるものに気付かなかったり、気付くのが遅れてしまったり、最悪の場合には気づかないままになってしまいます。
■簡単である反面、納税額は増加
発生主義で所得計算を行えば65万円の青色申告特別控除がとれますが、現金主義の場合には青色申告特別控除が10万円となってしまいます。その差は55万円です。
例えば、所得税の税率が最も低い率で計算したとしても、
55万円×15%(所得税5%+住民税10%)=82,500円(復興特別所得税は除いています。)
の納税額が増えることになります。
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