平成29年度税制改正により、主に大法人を対象とした確定申告書の提出期限の延長について改正が入りました。
今回はその改正の内容について見て行きたいと思います。
中小企業に関わる延長については下記の記事を参考にしてください。
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【H29年度税制改正】中小企業向け確定申告期限の延長の改正
平成29年度税制改正では、法人税の確定申告書の提出期限の延長特例が改正されます。 今回の改正により、中小企業の確定申告期限の延長に関する事項について、従来通達で定められていたものが、法律 ...
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趣旨
企業と株主・投資家の充実した対話の促進という観点から、平成27年6月に株式会社東京証券取引所が公表した「コーポレートガバナンス・コード ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」においては、上場会社は、株主総会関連の日程の適切な設定を行うべきであるとされ、また、「『日本再興戦略』改訂2015」において、企業が適切な総会日や議決権の基準日の設定を行うこととされ、「日本再興戦略2016」においても、対話を重視する企業が株主総会の日程や議決権の基準日を欧米諸国等の状況と比較しても合理的かつ適切に設定するための総合的な環境整備の取組を進めることとされています。
上場企業におけるこれまでの実務では、議決権の基準日と決算日を一致させ、会社法の規定に従い、その日から3月以内に株主総会を開催していたところですが、上記のような情勢を踏まえ、議決権の基準日を決算日後の日に設定することで、決算日(事業年度終了の日)の翌日から3月を経過する日後に株主総会を開催することが想定されます。
そこで、平成29年度税制改正により、法人税の確定申告書の提出期限について、一定の要件を満たす場合には、最大4月間の延長を認めることとされました。
概要
平成29年度税制改正前においては、確定申告書を提出する法人が、会計監査人の監査を受けなければならないことその他これに類する理由により決算が確定しないため、その事業年度以後の各事業年度の確定申告書をその提出期限までに提出することができない常況にあると認められる場合には、税務署長は、法人の申請に基づき、各事業年度の確定申告書の提出期限を1月間(特別の事情による場合には、税務署長が指定する月数の期間)延長することができることとされていました(旧法75 の2①)。
この制度について、平成29 年度税制改正により、以下の改正が行われました。
確定申告書の提出期限の延長の特例を適用することができる場合の見直し
確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受けることができる場合は、定款等の定め又はその法人に特別の事情があることにより、その事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から2月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合とされました。
この場合には、税務署長は、法人の申請に基づき、各事業年度の確定申告書の提出期限を1月間(下記⑵イ又はロに該当する場合には、それぞれに定める税務署長が指定する月数の期間)延長することができることとされました(法75 の2①)。
こちらの改正は従前からあった延長の規定を、株主総会が事業年度終了の日の翌日から2月以内に開催できない=決算が確定しないため確定申告書を2月以内に提出できないという形に言い換えています。
延長期間について税務署長の指定を受けることができる場合等の見直し
延長期間について税務署長の指定を受けることができる場合は次のイ又はロの場合とされ、延長期間はそれぞれ次のとおりとされました。
イ 会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めによりその事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から3月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合(法75 の2①一)
この場合の延長期間は、その定めの内容を勘案して4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間とされました。
ロ 上記⑴の特別の事情があることによりその事業年度以後の各事業年度終了の日の翌日から3月以内にその各事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあることその他やむを得ない事情があると認められる場合(法75 の2①二)
この場合の延長期間は、税務署長が指定する月数の期間とされました。
申請に当たっての留意点
・延長の申請をする場合には、適用を受けようとする事業年度終了の日までに、申請書を提出する必要があります。
・申請した後、事業年度終了の日の翌日から15日以内に税務署長による連絡がなかった場合には、提出期限の延長又は申請に係る月数の指定がされたものとみなされます。
・定款等の定めにより、事業年度終了の日の翌日から2月以内に定時総会が招集されない常況にあることを理由に確定申告書の提出期限の延長を申請する場合には、申請書に定款等の写しを添付する必要があります(法75 の2④)
申請書の記載例
国税庁の資料より以下の2パターンの記載例を転載します。