税務調査において、源泉徴収もれを指摘されることは少なくありません。その場合には、税務調査終了時に源泉徴収もれとなっていた源泉徴収税額を納付することになります。その納付した源泉徴収税額を相手先から回収できれば良いのですが、なかなかそうもいかないケースもあるかと思います。
今回は、源泉徴収もれと認定された源泉徴収税額の処理について考えていきます。
質問【源泉徴収もれの会社負担】
【質問】源泉徴収もれの源泉税を会社負担したが処理はどのようにしたらよいか?
当社は、先月末まで源泉所得税の税務調査を受けていました。税務調査では、源泉徴収への認識が誤っていた取引が発覚し、源泉徴収もれの認定を受けました。
後日、その源泉徴収もれとなっていた源泉税額を納付しましたが、この納付した源泉税額の会計・税務処理はどのようにしたらよいのでしょうか?
ご質問への回答
原則的には源泉徴収もれとなっていた源泉徴収税額については、支払先や従業員から徴収することが望ましいです。
徴収することが難しい場合には、その納付した源泉徴収税額の金額を費用として計上(損金経理)することで、その基礎となった取引の追加払いとすることができます。
解説
源泉徴収もれとなっていた源泉所得税を取引の相手先から徴収する
源泉徴収もれとなっていた源泉徴収税額を、次回の支払額から天引きして徴収することができれば、貴社の負担なしで処理をすることができます。
ただし、相手に源泉徴収制度や今回の税務調査の経緯を説明し、理解していただくことが必要になります。
源泉徴収もれとなっていた源泉所得税を会社で負担する
単発の取引であったり、自社に落ち度があったため、相手先から回収することが難しいケースも多いと思います。
その場合には、自社において源泉徴収もれによる源泉所得税の納付額を損金経理することにより、その基礎となった取引の追加払いとすることができる旨が通達上で認められています。
例えば、源泉徴収の対象となっていた取引が、外注費であった場合には、源泉徴収もれとなっていた源泉所得税の額を損金経理することで、外注費の追加払いとすることができます。その他、給与であった場合には給与の追加払いとなります。
ただし、以下の留意点があります。
〇貴社において追加払いとすることで、相手先の収入が増えることになるため、当初の取引完了日の時期と追加払いが決まった時期にズレが生じてしまう場合には、相手先の確定申告に期ズレの問題が生じてしまいます。
〇追加払いをすることによって増額した報酬に、更に源泉徴収が必要となります。
この追加払いは、税引手取り額により支払ったものとするとされていることから、源泉徴収負担額=追加払いの手取り額とする必要があります。
例えば、源泉徴収もれが発覚し会社が負担した税額が10,000円であった場合には、その金額を手取り額として支払うためには、1,137円の源泉所得税の納付が必要ということです。
(源泉税率が10.21%の場合)
・支払金額:10,000円÷(1-0.1021)=11,137円
・源泉徴収税額:11,137円×10.21%=1,137円
(1円未満の端数は切り捨てます。)
・手取額:11,137円-1,137円=10,000円
このように、追加払いの方法は、理論的には相手に影響を与えることになりますが、少額である等の理由であれば、源泉徴収義務者側での処理のみで済ませることが多いというのが実情です。
(金額が多額である等の理由により、影響が大きい場合には、相手先に説明をし合意が得られた上で処理する必要があると考えられます。)
【参考通達】
〇所得税法基本通達 221-1(支払者が税額を負担する場合の税額計算)
法第221条の規定により同条に規定する者から源泉徴収に係る所得税を徴収する場合において、その者がその徴収すべき税額を徴収していなかったときは、同条の規定により徴収すべき税額は、次により計算することとなることに留意する。(1) 当該税額を徴収していなかった理由が、当該徴収すべき税額を支払者が負担する契約となっていたことによるものである場合には、取引手取額により支払金額が定められていたものとして、181~223共-4により計算する。
(2) 当該税額を徴収していなかった理由が、(1)の理由以外のものである場合には、既に支払った金額のうちから当該税額を徴収すべきであったものとし、既に支払った金額を基準として計算する。この場合において、その計算した税額を納付した支払者が、その納付した税額につき法第222条《不徴収税額の支払金額からの控除及び支払請求等》に規定する控除又は請求をしないこととしたときは、当該控除又は請求をしないこととした時においてその納付した税額に相当する金額を税引き手取額により支払ったものとし、その支払ったものとされる金額に対する税額を181~223共-4により計算する。
〇法人税法基本通達 9-5-3 (強制徴収等に係る源泉所得税)
法人がその支払う配当、給料等について源泉徴収に係る所得税を納付しなかったことにより、所得税法第221条《源泉徴収に係る所得税の徴収》の規定により所得税を徴収された場合において、その徴収された所得税を租税公課等として損金経理をしたときは、その徴収の基礎となった配当、給料等の区分に応じてその追加支払がされたものとする。
法人がその配当、給料等について所得税を源泉徴収しないでその所得税を納付した場合におけるその納付した所得税についても、同様とする。(注) 法人がその徴収され又は納付した所得税を仮払金等として経理し求償することとしている場合には、その経理を認める。
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