税金(法人)

【外形標準課税】報酬給与額の取扱いについて

外形標準課税の計算要素の一つに付加価値額があります。

付加価値額は、「報酬給与額」、「純支払利子」、「純支払賃借料」、「単年度損益」から構成されますが、この中の「報酬給与額」について確認していきます。

報酬給与額の定義と対象範囲

報酬給与額とは、法人が支払う報酬や給与などのうち、所得税法上の給与所得または退職所得に該当し、法人税の所得計算において損金算入されるものをいいます。

これには、法人が通常支給する給与・賞与のほか、契約社員・パートタイマー・役員などへの支給も含まれます。

さらに、法定福利費以外の年金掛金や派遣社員の派遣費用などについても、報酬給与額に含める必要があります。

なお、これらの報酬給与額は、原則として損金に算入される事業年度において計上されますが、棚卸資産などの資産に計上されるものは、実際の支払いがあった事業年度に対象とされます。

 

非課税手当の取扱い

通勤手当・在外手当

通勤手当や在外手当については、所得税のルールに基づいて一定額までは非課税となりますが、その非課税部分については報酬給与額には含まれません。

ただし、非課税限度額を超えて支払われる部分については、所得税法上課税対象となり報酬給与額に含まれます。

(例)月額15万円を超える通勤手当や、国外勤務者への多額の在外手当等

 

旅費の支給と報酬給与額

旅費の支給については、その実態に応じた取り扱いがされます。通常、業務出張等に対する実費精算の旅費は非課税所得となり、報酬給与額には含まれません。

一方で、旅費の名目で支給された金銭が実態として給与の性格を有すると判断される場合などは給与所得になることから、報酬給与額に含まれます。

 

役員報酬および賞与の扱い

役員賞与

役員賞与のうち、事前確定届出給与として法人税法上損金算入されるものに限り、報酬給与額に含まれます。

届出をしていない役員賞与等は損金不算入とされるため、報酬給与額の対象外となります。

 

役員報酬

役員報酬は、法人税法上損金算入される限度内で報酬給与額に含まれます。

なお、「不相当に高額」な報酬で損金算入が否認される部分については、含まれません。

 

非常勤顧問・契約社員等への支給

会社のOBを「非常勤顧問」として雇用しているケースでは、その顧問が雇用関係またはこれに準ずる形で会社の業務に従事しているときで、支払う給与が所得税上「給与所得」または「退職所得」と認められる場合には、その支払いは報酬給与額に含まれます。

非常勤役員、契約社員、パートタイマー、アルバイト、臨時雇いその他名称のいかんを問わず、雇用関係又はこれに準ずる関係に基づき労務の提供を行っており、支払われる給与が、所得税において給与所得又は退職所得に該当するかどうかが判断のポイントになります。

 

現物給与の扱い

法人が従業員に対して支給する現物給与(自社製品、株式、住宅の提供など)は、所得税法上課税対象であり、かつ法人税法上損金算入される場合に限り、報酬給与額に含まれます。

 

福利厚生費および法定福利費

福利厚生費

福利厚生費は、一般的には給与課税の対象とならない(給与所得とされない)ため報酬給与額に含まれません。ただし、名目が福利厚生費であっても、実質的に給与所得や退職所得として課税される場合には、報酬給与額に含まれます。

 

法定福利費

法定福利費は、社会政策の観点から、その拠出が法令で義務づけられているものであり、強制的な公的負担であるという点で、任意に拠出される給与や確定給付企業年金の掛金等とは性格が異なることから、報酬給与額には含まれません。

法定福利費とは、健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険など、法令により拠出が義務づけられている費用をいいます。

 

保険料の支払いとその取扱い

法人が契約者となって役員または使用人(あるいはその親族)を被保険者とする養老保険、定期保険、定期付養老保険に加入し、その保険料を支払った場合には、給与課税される部分については報酬給与額に含まれることになります。

 

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jun.hamano

濱野純税理士事務所 代表。 【事務所HP】https://hamanotax.com 1980年10月 埼玉生まれ。埼玉県草加市育ち、東京・蒲田在住。税理士。中小企業診断士。節税、節約、税務処理を身をもって実践しブログに公開しています。

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