国際取引に関する税務として、外国税額控除という制度があります。
外国税額控除とは、日本と他の外国で二重課税となってしまっているのを排除するための制度になり、国際取引を考える上では重要な事項となります。
今回は基礎として、そもそも外国税額控除とは何かについて確認していきます。
外国税額控除とは?
外国税額控除とは、国際的な二重課税を排除することを目的に、外国で納付した外国税額を一定の範囲内で日本における納税額から控除する制度のことをいいます。
日本の法人は、全世界どこで利益を上げても日本の法人税の課税対象となります。(全世界の所得に対して課税が行われます。)
そのため、外国で得た利益について外国でその国の税金が課される場合には、同一の利益に対し、日本とその外国とで課税が行われることになり、国際間の二重課税が生じてしまいます。
この二重課税を排除するための制度が外国税額控除です。
外国税額控除の計算方法の概要
外国税額控除は、外国で得た税引後利益を外国の税金が課される前の所得になおして、日本の法人税の課税標準とします。
そして、日本の法人税を計算し、外国で納付した外国税を日本の法人税から差し引いて納税する制度です。
具体的なイメージとして、以下のようになります。
前提
・外国所得 100
・外国税 20
・差引き後の所得 80
・日本の税率 30%
日本における課税標準
100 |
日本の当初法人税額
30 |
納付済み外国税 20 |
日本での法人税額 10(=30-20) | ||
税引後手取額 70 |
外国税額控除ではなく損金処理も可能
外国税額について、外国税額控除を適用せずにそのまま損金とすることも可能です。どちらを選択するかは法人の任意とされています。
注意点として、同一事業年度でいくつかの外国税額の負担がある場合には、一部分は損金処理として、その他の部分につき外国税額控除を適用するということはできません。どちらか一方を選択適用することになります。
外国税額控除と損金処理 どちらが有利か?
一般的には、外国税額控除は日本の税額から直接控除することが可能なため、損金処理よりも外国税額控除の方が有利となります。
ただ、場合により、損金処理の方が有利となる場合があります。
例えば、法人全体の所得が赤字であり、日本の法人税が生じない場合には、税額控除すること自体ができません。(この場合でも税額控除することができなかった外国税額を3年間繰り越すことができます。)
また、今後数年の間は赤字が続いてしまうような場合には、損金処理をして繰越欠損金としてしまう方が有利になるケースがあります。